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快適な無線通信を目指して

小川 将克(情報理工学科・准教授)

2013年
出典: ソフィアサイテック vol,24

小川 将克(情報理工学科・准教授)


 携帯電話は、サービス開始当初の用途であった通話から、その後のインターネットとの融合によりインターネットアクセスへと移り変わりました。携帯電話の歴史を振り返ると、自動車に搭載された自動車電話の登場により、固定電話に接続されたケーブルから解放され、その後の携帯電話の登場により、一家に一台から一人一台になりました。一方、家庭内のネットワークにおいても、ケーブル敷設の煩雑さからの解放とパソコンの可搬性を可能とする無線LAN が登場しました。登場した当初は、無線LAN が有線LAN に比べて著しく低速であり、高価であったことが普及を妨げましたが、その後、伝送速度が著しく向上したことと安価になったことで普及拡大しました。さらに、昨今では、携帯電話と無線LANを融合させたスマートフォンの登場により、無線通信の利用形態は多様化しています。このように、無線通信はケーブルからの解放を契機として、「パーソナル化」、「複数無線通信システムの融合」により、快適な通信環境を提供しています。
 私たちが日常利用している無線通信機器は、小型化され、持ち運びに便利になりましたが、バッテリ駆動のために駆動時間の制約があり、また多くの無線通信機器で電波を共有するために混雑することや、電波が減衰し場所によって通信品質が異なることがあります。さらに利便性を向上させるために、このような課題を克服するための研究に取り組んでいます。本稿では、現在進めている研究の一部について簡単に紹介します。

モバイルルータの省電力化

 携帯電話と無線LAN の機能を融合させたモバイルルータが普及しています。モバイルルータは、固定のインターネット回線がない環境において、無線LAN 機能が搭載された無線LAN 端末をインターネットに接続するために、モバイルルータを利用します。スマートフォンのデザリングも、モバイルルータと同様の機能であり、インターネットに接続するために携帯電話の回線を利用し、無線LAN 端末と接続するために無線LANを利用します。つまり、モバイルルータには、携帯電話端末と無線LAN アクセスポイントが搭載されています。
 無線通信には標準規格があるため、世界各地で無線通信機器を利用できます。その標準規格においては、端末はバッテリ駆動が前提であるために省電力方式が規格化されていますが、基地局(アクセスポイント)は電源供給されることが前提のために省電力方式が規格化されていません。そのため、無線LAN アクセスポイントの省電力化に取り組んでいます。また、さらなる省電力化を目指して、モバイルルータ内部で携帯電話と無線LAN の通信方式の連携についても取り組んでいます。

スマートハウスの無線通信の効率化

 通信ネットワークと連携して、家庭内の電力の需給量を制御し、省エネ・節電を図るスマートハウスが注目されています。新たに家電を制御するために、無線通信を利用します。スマートハウスのための無線通信として、省電力の無線通信であるZigbee が注目されています。既に家庭内で広く使われている無線LAN とZigbee は、ISM(Industry-Science-Medical)バンドと呼ばれる同一の周波数を利用するため、異なる無線システム間での電波干渉により、通信品質が劣化することがあります。このような通信品質の劣化を克服するための通信方式の確立に取り組んでいます。

最後に

 携帯電話や無線LAN の普及により、無線通信は身近なものになりました。今後は、無線通信の使われ方は多岐に渡ります。これまで想定されていたこととは異なる用途で使われることがあります。そのような中で、既に明らかにされた課題に加え、将来の新たなサービスやシステムを見据えた研究に取り組みたいと考えています。

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