• 「ナノテクノロジーとエレクトロニクス」講演会報告

     2008 年 11 月 6 日(木)午後 4 時〜 6 時 30 分まで、12 号館 102 教室において、機能創造理工学科主催、SLO 産学技術交流会共催の「ナノテクノロジーとエレクトロニクス」講演会が行われた。この講演会には超高速トランジスタ HEMT 開発者である富士通フェローの三村高志先生をお招きし、基調講演を行っていただいた。
    HEMT は、その優れた高速、低雑音特性から、衛星放送受信機や携帯電話機、カーナビゲーション受信機、ミリ波自動車レーダなど IT 社会を支える基盤技術として広く使われている。また 1985 年に電波望遠鏡用の低雑音受信機としてはじめて製品化された HEMT は、未知の星間分子を発見するなど、電波天文学の進歩にも寄与した。アメリカのクリントン政権 が2000 年 1 月に発表した National Nanotechnology Initiative において、ナノテクノロジーの成功例の一つに HEMT があげられ、ナノテクノロジーが世界的な注目を集める一翼を担い、さらに、HEMT の発明は、半導体の薄膜成長技術の進展を加速させ、その後の、化合物半導体を用いた電子デバイス、光デバイス技術の発展に大きな貢献を成している。講演会の前半では、本学におけるナノテクノロジー研究の一例として、情報理工学科・和保孝夫教授より「ヘテロ接合電子デバイスを用いたアナログ/デジタル回路」、機能創造理工学科・岸野克巳教授より「窒化物半導体ナノコラムによる三原色発光」、機能創造理工学科・坂間弘教授より「遷移金属酸化物超格子によるマルチフェロイック材料の創製」、機能創造理工学科・高井健一准教授より「水素エネルギーインフラ材料とナノテクノロジー」という題目で講演を行っていただいた。
     そして基調講演として三村高志先生より「超高速トランジスタ HEMT の誕生とその発展」という題目で、トランジスタの発明から超高速トランジスタ HEMT 開発に至る歴史と、HEMT の特長、またその応用分野、さらにイノベーションとして成功させる鍵など幅広い見地よりご講演を頂いた。三村先生は当初 GaAs 化合物半導体の MOSFET に関する研究を行っておられたが、それが実用化できないという経験を元に、HEMT という大発明に至った経緯が紹介された。「失敗は発明の父」という言葉が示すとおり、小さい失敗と中くらいの成功体験により大発明が生まれることを強調された。またイノベーションとして成功するためには、開発した製品の長所を見つけ、最初はニッチな市場でも、その能力にあった市場に出すという実践の繰り返し(能力×実践)が重要である、ということが述べられた。若い学生諸君には、大学 4 年間においては基礎学力をしっかり身につけ、大学院において研究を行うよう、今後の励みになるご助言を頂いた。
     講演会には、理工学部 3 学科の先生方、学部、大学院学生、また外部の方々約 80 名程度のご参加を頂き、盛況のうちに講演会を終了した。また講演会終了後、SLO のご援助を頂き、11 号館会議室において三村先生を交えて教員、学生、学外 SLO 委員、約 30 名が参加した懇親会を行った。この懇親会では、HEMT の当初の評価や HEMT (High Electron Mobility Transistor) という命名の経緯などについて和やかな雰囲気で懇談が行われた。
     最後に三村先生講演会開催においてご尽力頂いた富士通研究所・伊藤裕康 SLO 委員、懇親会開催のご援助をいただいた SLO、また講演会開催の準備にご協力いただいた下村研究室学生諸君に感謝いたします。





    三村先生の講演の様子


     

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